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タイトルはisさまより。

空白の二ヶ月間のスザルルの一幕。キスつながりで。

折りたたんでおきます。








 スザクは拳を突き出してルルーシュの眼前で寸分も狂わずにぴたりと止めた。ふわりと、彼の絹のような前髪が揺れた。鼻先に微かに触れるような拳。ルルーシュは、目の前に勢いよく拳が迫っても、けして睛を閉じなかった。ただ、ひたとスザクをまっすぐにとらえる紅玉。それにスザクは、ほんの少しだけ、泣きたくなった。
 ルルーシュはひどく穏やかな貌をしている。まるで聖母のようだ。無味乾燥なそのほほえみを眺めてスザクは、繰り出した拳を、ぎこちなく引き下ろした。
 本気なんだね。
 それは、声にできなかった。
 視線を落としたスザクの視界に、ルルーシュの白い手が映る。今しがたルルーシュに向けた右手の拳に、ルルーシュの繊細な指が、そっと解きほぐすように絡まる。それにスザクは、引き寄せられるように、指先から腕を伝ってルルーシュの相貌へと視線を上げる。
 慈母のほほえみ。スザクの睛が合わさると、ルルーシュの紅玉が撓む。その、紅にとらわれる。意識しないうちに、スザクの右手はルルーシュの壊れ物のような指先をぎゅっと強く握りこんでいた。
 しんと、部屋は静まり返っている。ただ、二人の吐息だけが、かすかに空気を震わせていた。
 ふたりの願う「明日」のための、ふたりだけの、約束。
 それを違える気など毛頭ないけれども。
 スザクは左手で、ルルーシュの後頭部をそっと支えて、己に引き寄せる。こつり、と、額があわさる。紅玉と翡翠が、間近で互いを反射する。ルルーシュがゆっくりとまたたきをする。長い睫が、ふさりと被さって、また、重そうに持ち上がる様を、じっと、見詰めていた。
 これは、人形ではない。
 どこか造りものめいたうつくしさを醸し出しているルルーシュの吐息を
確かめようと、スザクが、ほとんど唇が重なるほどの距離まで、顔を寄せる。ふう、と、己にかかる微かな吐息を感受して、スザクは、目を閉じる。
 生きている。
 閉じたスザクの瞼の上に、やわらかく、すこしだけつめたい感触がおしあてられる。それにぴくりと、瞼が痙攣した。ルルーシュの唇が、スザクの瞼に触れている。そのままルルーシュは、スザク、と唇だけでささやく。そのひとことに堪えきれなくなって、スザクは瞼を押し上げる。彼の全てを、赦される限り、この眼に、この脳に、焼き付けておきたかった。
 少しだけ背伸びをしたルルーシュが、ゆっくりと姿勢を元に戻して、ただ穏やかなばかりの貌を晒すことに、どうにも我慢ができなくなって、スザクは左手でルルーシュの頬を抓った。
「む、」
 どこか間抜けに響いたその声に、スザクがふっと息を漏らす。それに、何をする、と言いたげにルルーシュの眉根が寄った。ただ、それだけのことに、スザクは泣きたくなるほどうれしくなる。そして、汗ばむほど握りこんでいたルルーシュの手を、放した。
 そうして両手で、その頬を包み込む。
 今この瞬間、もっと、いろんな表情を、させたかった。けれどもうそれは、届かない処に。
 不遜に歪む唇。憎悪に燃える睛。胡乱げに顰められた眉。最愛の妹に向けられていた優しい微笑み。くるくると悪戯に戸惑う困惑。軽口に軽快に受け答えするあどけなさ。屈託のない笑顔。
 それらいつか、確かに、存在していたはずのもの。
 祈るように、もういちど、スザクは額をあわせる。スザクより少しだけ低いルルーシュの体温。額をあわせたまま、スザクはルルーシュの薄い身体をそっと抱き締める。胸を合わせれば、とくとくと互いの鼓動が触れた。
 今スザクが頑なに見詰める先にあるのは、生きることを諦めた者――否、死を、受け入れた者の、貌。
 きっと彼は、大勢の観衆の前では、最期まで、ふたりの願う「明日」のために、豊かに演じ切ってみせるのだろう。
 主演男優賞は、君だよ。
 一体それがどんな賛辞になるのかもよくわからなかったが、ただ、スザクはそう思った。
 今スザクにだけ向けられている、嘘偽りのないルルーシュの貌。
 それにスザクは、いったい何を思えばいいのか、皆目見当もつかない。
 言葉にならない感情が雑多にあふれて、ただ、呼吸をしているだけで、精一杯だった。

 もし、君が、少しでも、迷ったなら。

 そこまで考えて、けれどその先に自分がいったいどうしたかったのかも判じかねて、スザクは思考を放棄した。その瞬間、ルルーシュの薄い唇が、スザクの唇にかすかに重なった。お互いに、眼は見開いたまま。視線だけで、なぜと問うと、ルルーシュが、ほんの少し、困ったようにほほえんだ。それにスザクの中で何かが弾ける。
「おまえが、泣きそうだったから」
 泣くには、まだ早い。そう言ってルルーシュが楽しげに笑った。堪えきれずにスザクは、ルルーシュに口付けて、深く貪った。ルルーシュはただ、それを甘受する。
 長く長く、吐息の限界にまで挑んで唇を離すと、はふはふと整わない呼吸の中、ルルーシュは、やはり少しだけ困ったように微笑んで、忘れるなよ、と、やわらかく言った。
 スザクはどんな表情も浮かべなかった。それにルルーシュはかすかに悲しげに睛を曇らせたけれども、それは彼も、知っていたからだ。スザクがいったい、どんな表情をすればいいかすら判らないことに。
 けれどルルーシュは、けして、謝罪の言葉は口にしない。
 そう、これからの全て、スザクが、スザクの意志でもって行うこと。
 けして、誰からも強制されることなく。己の意志で。
 でもルルーシュ。
 ほんとうに、心の底から、どんな貌をすればいいのか判らずに、スザクは途方に暮れた。
 少しくらい、迷ってくれても、良かった。

 ああ、どうして自分は、こんなひとを愛してしまったのだろう。







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無題
も…ぶわっ……!
やめてやめて…
ほんとだよ、ルルーシュ。大好きだよ、馬鹿!
ゆつき 2008/10/05(Sun)01:45:42 編集
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