スザルル祭、お疲れ様でした!!
一緒に行くと言っていた友人が結局朝起きなかったので、一人で行って参りました、スザルル祭。
寒いかもと持って行ったカイロをキャリー(inロッカー)にしまってきてしまった私…待ってる間は思ったより寒かったですね。一度会場に入ってしまえば暑いくらいでしたが、早く行ったおかげか大手さんも殆ど並ばずにいけました。買いたい本は8割方買えたんじゃないかと思います。殆ど小説。日参してるサイトさんばかりだったのに、チキンなあまり一言も言えず…あうぅ。予算はオーバーしてしまったけど、悔いなし!大阪に戻ってくる新幹線の中でもキャリーに詰め込んだ本のことを思い出すたびにそわそわしてました(笑)
やっぱりスザルル最高!ギアス最高!これからも熱いですよ!!
ということで、現代not幼馴染パラレルでスザ→ルル小話を折畳んでおきます★スザクが別人になっちゃった…。
彼は僕らにとって非日常だった。
曲がり角の自覚制服が半袖から長袖に変わって朝夕の冷え込みが厳しくなってきた頃、一人の転校生がやってきた。
やる気のない初老の担任の隣で、彼はクラス中の視線を一身に集めながらも涼しい顔でゆっくりとクラスメイトとなる生徒達を眺めていた。
担任に促され、整いすぎたほど整った顔にほんの少しだけ笑顔を乗せて彼は初めて口を開いた。
「ルルーシュ・ランペルージだ。よろしく頼む」
予想よりも低い声だなと思うと同時に、彼に興味が湧いたのを覚えてる。
それが今からちょうど2ヶ月前のこと。
移動教室でざわつく午後、僕は次の教科書を用意しながら彼の背中を見つめていた。めいめいに教室を出て行くクラスメイトも、そんなときの僕には声をかけない。クラスのなかでここ2ヶ月の間に出来た暗黙のルールのうちのひとつ(らしい)。
ルルーシュ・ランペルージの姿を僕が目で追っているときの僕は、集中しすぎてて何を言われても反応しないから(らしい)。
「ほらほらお前らさっさと移動しろよ~。地学教室遠いんだからな」
廊下から世界史の教師が覗き込んで声をかけてくる。それに促されたみたいに、それまで座っていたランペルージがトントンと教科書やノートを揃えて席を立った。
それを見て、僕もやっと移動教室のことを思い出した。慌てて用意を再開させる僕の隣で、僕を観察していたらしいリヴァルがやれやれと首を振ったのが見えた。
神様が特別時間と手間をかけてつくったんだろうなぁと思わずにはいられないほど、彼は顔も髪も姿もとにかく全部が綺麗だった。
生まれて初めて見る、今まで見たどんな人達よりも美人の転校生は、あっという間に全校生徒の噂の的になった。彼の短い自己紹介の後、教室は一気にざわざわと騒がしくなったし、案の定次の休み時間には大勢のクラスメイト達に囲まれていたのに、その次の日の放課後にはその人だかりはほとんどなくなっていた。
『とっつきにくい』
週番で慌ただしく、気になりつつも彼に話しかけられなかった僕にクラスメイトが教えてくれたその理由がそれだった。
その独特の雰囲気のせいでただでさえ話しかけにくいにも係わらず、勇気を出して話しかけてもろくに会話にならないらしい。
クラスメイトの言葉を無視するというわけではなかったけれど(現にクラスメイトと会話しているランペルージを見たこともある)、そのとっつきにくさにランペルージに構おうとする猛者は徐々に少なくなっていった。
ある意味高嶺の花(リヴァル命名)となったルルーシュ・ランペルージは、相変わらず異彩を放ちつつも最近では彼なりにクラスに馴染みつつある。
「しっかし、ほんと麗しいなー。知ってるか、スザク。女子部じゃ噂に尾ひれつきまくってファンクラブまで出来てるらしいぞ」
昼食時間、食堂ではなく屋上に数人で集まって食事をしていると、リヴァルが羨望半分、感心半分みたいな顔で大好物の焼きそばパンを食べながら話を持ち出した。
女子部でも人気者なのか、とリヴァル同様関心する。この学校は3年前まで男子校だったせいで未だに校舎は男女別だ。別々どころか校舎の敷地自体も三駅分くらい離れているから、別の学校といった方がしっくりくる。入学早々リヴァルがこれを共学と呼ぶのは詐欺だと涙目で頭を抱えていた。どうやら女子部にいる憧れの人を追って入学してきたらしい。
「ランペルージのこと?」
「そうそ、我らが女王様だよ」
「なに、女王様って」
聞き慣れない言葉に首をひねると、だからランペルージのことだよ、と呆れ顔で返される。本当にスザクはそういう噂に疎いなとリヴァル達に笑われた。僕がその呼び名を何となく言い得て妙だなぁと思いながら4つ目のおにぎりのセロハンを破いていると、目の前でリヴァルがいやにいい顔をしてにやりと笑う。
「いいこと思いついた!」
ずい、と身を乗り出してくるリヴァルから思わず目を逸らした。
「…あんまり聞きたくない気がするのは何でだろう」
さりげなくを装って体をずらそうとした途端、両端にクラスメイトが寄ってきて脇を固められる。
「まーまー、枢木くん。聞こうよ聞こうよ」
「そうそう、まずは聞いてみようぜ!何だよ、リヴァル」
掴まれた腕を振り切ることは簡単だけど、目の前のリヴァルの勢いに負ける。こうなったら聞くしかないかと、諦めて「分かったよ」と頷くと、リヴァルの目の輝きが増した。
「よく言った、スザク!よし、よーく聞けよ?つまりだな…」
リヴァルが思いついたのは、平たく言うと罰ゲームつきの賭けチェスだった。「体力勝負じゃスザクが有利すぎる」という理由で賭けチェス。それじゃ僕に不利すぎるんじゃないのという言い分はその場にいた全員から見事に却下され、昼休みが終わる頃には僕の負けが決定していた。
「ルルーシュ・ランペルージに話しかけて、ちゃんと会話してくること!友達になれたら1週間食堂で1000円の特Aランチ奢ってやる!」
リヴァルから告げられた罰ゲームの内容を思い出して、もう何度目か分からない溜息を吐いた。黒板消しを持つ手も止まるというものだ。
「あ~んなに熱心にランペルージのこと見てるくせに、まだ喋ったことないんだろ?お前にとってもいい機会だと思うけどなぁ」
そう言いながらにやにやと笑っていた悪友を思い出して、僕はまた溜息を吐き出した。
彼と喋ってみたいと思うのは確かだ。だけど、リヴァルの言う通り僕はまだ一度もまともにランペルージと会話をしたことがない。明確な理由はなかったけれど、何となく話しかけられずに2ヶ月が経った。強いて理由を挙げるなら、多分彼が綺麗過ぎるからだと思う。
「人見知りするタイプじゃないんだけどなぁ」
どちらかというと社交的な性格だと思うし、現に昔から周囲に人は絶えなかった。知り合いが誰もいないこの高校へ入学したときも緊張一つせずにすぐ友達ができた。2年に上がってクラス替えがあったときだって、周りのクラスメイトに話しかけるのにきっかけを探したこともない。
また長々とした溜息をつき、のろのろと頭を振る。いつまで悩んでいても仕方がない。今日は彼も早々に帰ってしまったようだし、今日はさっさと掃除を済ませて早く部活へ行こう。
止まっていた手を動かして、ぱんぱんと黒板消しを叩く作業を再開させる。
その瞬間、後ろからけほけほと小さな咳が聞こえてきた。
「あっ、ごめん!煙かった?あ……ラ、ンペルージ?」
慌てて振り返った先にいたのは、たった今まで考えていたルルーシュ・ランペルージ本人だった。片手に分厚い本を抱えている。寮に帰っていたのではなく、図書館に行っていたらしい。
「いや、大丈夫だ」
ランペルージが首を振って「こっちこそ驚かせてすまない」と言った。自分の席に戻って帰る支度を始めた彼を見ていると、ふと顔を上げた彼と目があった。がっちりとあった視線を逸らせない。かと言って会話を続けられるようなきっかけもない。変な汗をかきそうになっていると、自分からは滅多に話しかけたりしてこないと有名なランペルージが僕の方に近寄りながら「枢木は週番か」と喋りかけてきた。
「えっ、あ、うん、そう!週番なんだ」
予想外の展開に思わず返事が怪しくなる。ランペルージは「そうか、大変だな」と言いながら、まだ掃除していない黒板消しを手にとって「手伝おう」と言い出した。
「そんな!悪いよ」
思わず断った僕に、構わないと首を振る。綺麗な指が持つと、ただの黒板消しも何だか特別な物に見えてくるから不思議だ。
「じゃ、じゃあ、甘えようかな。ありがとう」
さっきまでどうやって話しかけようと機会探しをしていたのに、その直後にその絶好のチャンスに身を置かれると、それはそれで戸惑う。
さらさらと襟を流れる黒髪に目を奪われていると、視線に気付いたランペルージが振り向いて首を傾げてきた。
「何だ?」
「えっ、いや!?」
咄嗟に首を振ったが、あれだけ見ておいて何もないはないなと内心苦笑する。
「…うん、ええと、ちょっとね。君と話すのは初めてだなぁって」
妙な照れ臭さを覚えながらそう言うと、ランペルージは一度首を傾けて面白そうに笑った。
「そう言われればそうだな。でもお前の声はよく通って聞こえるから、初めて話す気がしない」
笑顔は誰でも美人に見せるというけど、本物の美人の破壊力は桁違いだということを身をもって体験することになるとは思っていなかった。笑いかけられて体温が一気に上がる。
「そ、そう、かな?」
「ああ。お前はどこにいても目立つからな」
くすりと笑われて、ぽんと綺麗になった黒板消しを手渡される。「じゃあな、また明日」と言われて、急に胸のなかがざわついた。もう終わり!?と焦りながら、ぱくぱくと上手い言葉を必死に捜す。背を向けるランペルージの腕を咄嗟に掴んでから、何も思いついていないのにやってしまったと後悔が怒涛のように押し寄せた。
「どうした、枢木」
不思議そうに見返してくるランペルージに、何かを言わなければと普段あまり有効に使われることの少ない脳みそがフル回転する。
「ぼ、僕と、」
「僕と?」
ごくりと喉が鳴った。フル回転していた頭は、回転しすぎて空回り、結局働いていなかったらしい。自分でも思っていなかった言葉を、僕は自分の声で聞いた。
「僕と結婚を前提に付き合ってください!!」
きょとん、とランペルージが数回瞬きを繰り返す。
そして、言った本人の僕自身も展開についていけず、ぱちぱちと瞬いた。
下校時間を過ぎた校舎は静まり返っている。掴んだ腕も放せないまま僕もランペルージも佇むしかない。
「結婚?」
沈黙が痛いと思い出した矢先、不意にランペルージが呟いた。
「け、けっこん」
その言葉を繰り返しながら、ただ頷くしかできない。情けないと思いつつも、ランペルージの紫紺の目を見つめ返すので精一杯だった。
「結婚だと?」
「そ、そう!し、幸せにするよっ!」
もう止められない。自分でも何を口走っているのかよく分からなかった。だけど嘘をついているわけではなかったし、言ってしまった手前今更撤回するわけにもいかない。それに、不思議なことに言いながら僕自身が、もうそれしかない!名案だ!と思うに至っていた。知らなかった、僕は彼のことが好きだったのか。
「……間違っているぞ、枢木スザク!」
返されたのは、許容でも拒否でもなく、予想外の叱責だった。
「へ?」
「間違っているぞ!結婚とは幸せになるためにするものではなく、幸せな2人がするものだっ!」
空いた方の長い手を振りかざすように翳して俳優みたいに言い切るその姿に、思わず見惚れた。そのときの僕は、美人は何をしても様になるって本当なんだな、なんて的外れな感想を抱いていたんだけど、思えば僕がルルーシュ・ランペルージに完全に落ちたのはこの瞬間だった。
彼の存在が僕にとって日常になるのは、また少し先の話。
よそよそしい2人(呼び名とか)と、その2人のちょっとズレたやりとりが書きたかった(笑)自覚したスザクは強いに違いない。
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