また明日、その言葉が(1)

Author:ゆつき

ギ/ア/ス企画部屋の第一弾は、初の合作！
澪さんと合作だなんてしょっぱなからチャレンジャーな私(笑)
時期は第一期の初期も初期、ジンジュクゲットーで再開してから間もない頃です。

続きの中に押し込めておきます。

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スザクがその美しい兄妹を思い出したのは、日本がエリア11と名を変えた7年前以来、シンジュクゲットーで偶然にもルルーシュと遭遇したその日のことだった。
その忘却が意図的にしろ故意にしろ、それでも結果的に7年間忘れていた幼馴染を思い出したのは、ルルーシュの瞳が変わらず紫紺の輝きを持って輝いていたからだったのではとスザクは思っている。



「お疲れ様！もう終わってもらっていいわよ、スザクくん」
その声に弾かれたようにスザクは顔を上げた。
いつの間にかぼんやりと意識を飛ばしてしまっていたらしい。
「スザクくん？」
「あ、はいっ！すみません、セシルさん」
着替えを済ませ更衣室を出ると、エプロンを纏ったセシルが笑顔で包みを差し出してきた。
「今日も急に呼び出したりしてごめんなさいね。ロイドさんがどうしても今朝思いついた実験をしたいって聞かなくて…スザクくん、せっかくのお休みだったのに」
「そんな。いいんです、仕事ですから。それよりこれは？」
まだ温かいその包みを鼻に近づけると、日本人には懐かしい匂いが漂ってくる。
「おにぎり、というヘルシーなお夜食よ。本当は何か具を詰めるものと聞いたんだけど、生憎今日は冷蔵庫が空だったの。これからお友達の所へ行くんでしょう？よかったら一緒に食べてね」
スザクは頭を下げて礼を言うと、特派を後にした。

すっかり日の落ちた道をアッシュフォード学園に向かって歩きながら、スザクは昼前にロイドに呼び出された後、ルルーシュと交わした会話を思い出していた。
午後のお茶に招かれていたところへ、セシルから連絡が入ったのだ。夕食も一緒にと誘われていたのに、そう申し訳なさそうに眉を寄せるスザクにルルーシュは呆れつつも綺麗に笑いながらこともなげにこう返した。
「帰ってくればいいだろう、遅くなっても夕食くらい温めなおしてやる……か」
7年間、感じなかったものが胸に過ぎる。あの幼い夏の日、3人でいたころには確かに感じていたそれ。
まだ冷めない包みを抱えなおし、スザクは駆け出した。



アメジストという宝石がこの世にあるということをスザクが知ったのはちょうど7年前だ。
ルルーシュが洗濯物を取り込みに席を外しているとき、悪いとは思いつつもナナリーの目の色は何色なのか尋ねたことがある。
ナナリーは気にするでもなく答えてくれ、そして数多くいる兄や姉、弟や妹たちのなかでルルーシュの瞳の色が一番綺麗なのだと嬉しそうにスザクに告げた。そのときにルルーシュの瞳に似た美しいアメジストという宝石があるということを教えてもらったのだ。
ルルーシュの目の色は出会ったときからスザクも綺麗だと感じていたので、ナナリーの言うそのアメジストという宝石はとてつもなく綺麗なものなんだろうと素直に思ったのを覚えている。



「なんだ、思ったより早かったじゃないか。お帰り、スザク」
人を訪ねるには遅すぎる時間だったが、それでもルルーシュはスザクを笑顔で迎えた。
お帰り、という言葉にスザクも笑顔で
「ただいま」
と返す。それだけで耳が熱くなるような錯覚がする。スザクは先ほどまで自身を満たしていた温かな感情が再び胸に溢れるのを感じた。
疲れていないかとスザクを労い、ナナリーがついさっきまで起きてスザクの帰りを待っていたのだと言いながら手早くスザク用に分けておいた夕食を温めなおす。
「悪いことしちゃったな。今度埋め合わせをするって伝えておいて」
「仕事だ。仕方ないだろう、ナナリーだって分かっているさ」
ジャケットを脱ぎながら、スザクは持っていたおにぎりの入った包みをルルーシュに渡した。
「夜食に友達とどうぞってもらったんだ。懐かしいよね」
包みを開け、ルルーシュも笑顔をこぼす。
「そうだな。実は今でもたまに食べる」
アメジスト色の切れ長な瞳が細められ、ルルーシュが懐かしそうにスザクを見つめた。
その笑顔につられて思わずスザクも頬を弛める。
「相変わらず三角には握れないんじゃないか、スザク」
「うわ、よく覚えてるね。でも俵には結べるようになったよ」
それからスザクとルルーシュは遅い夕食を一緒に取り、他愛無い話をして笑いあった。