とにかく甘い話を!と思ってかきました。
遅筆な私には1本が精一杯でしたが、某サイトさんの耐久レースに触発されて。
今連載中の星の王子様の設定のような違うような。
とりあえず、ギアスも戦争も何もない平和な世界の話です!
スザルル大好き!あいしてる!!
タイトルは「
恋したくなるお題」さんから。
「申し訳ありません、お兄さま、スザクさん。ちょっと席を外させていただきます」
すぐに戻ってきますからと、ナナリーが友人からの電話を受けるために自室へ戻る。女の子同士の秘密の相談事なのでここではできないんですと、ナナリーが頭を下げるのを僕とルルーシュは笑顔で見送った。
「よかったね、もうナナリーも仲良しの友達ができたみたいで」
そう言うと、隣に座っていたルルーシュが「何を今更」とでも言いたげに肩をすくめる。
「当然だろう、俺のナナリーだぞ。あんな愛くるしい妹を捕まえて何の心配だ」
そう言いながら呆れたように僕を見た。
でも、僕は知ってる。二人が転校してきてからというもの、しばらくはナナリーのことを心配しすぎて、ばれないようにと毎日こっそり中等部まで様子を見に行っていたのはルルーシュ本人だ。
「そうだね」
笑いを堪えながらもそう返すと、ルルーシュは満足そうに頷く。まったく本当にルルーシュは可愛いなぁと思っていると、向かいに立つ咲世子さんと偶然目が合ってこっそりと笑いあった。
ルルーシュがわざわざ取り寄せたという薫り高い紅茶を前に(生憎僕は紅茶には明るくないので詳しくは知らない)、しばらく3人で他愛無い話をする。
穏やかな時間。
優しい人達。
数ヶ月前までの自分には縁遠かった空間だ。
それに何より、今自分の隣には求めて止まなかったルルーシュがいる。
笑ったり怒ったり拗ねたり、常のポーカーフェイスはどこにいったんだと思うほどルルーシュの表情は豊かだ。だけど、それが見られるのは彼が身内だと懐に入れた人間だけだと知っているから、僕は屈託のないルルーシュの笑顔が嬉しかった。
「ところで…」
不意に、咲世子さんが顔をちょっとだけ強張らせて声をかけてきた。
基本的に彼女がこんな顔をすることは珍しい。少なくとも僕やルルーシュはあまり見たことがなかった。ルルーシュと目で頷きあって咲世子さんに向き直る。
あまり良くないことかもしれない。ナナリーのいない隙をついているのだろうか、もしそうなら、と僕達が身構えた瞬間、
「ルルーシュ様とスーさんはいつご婚約されるご予定ですか?」
盛大にルルーシュが紅茶を吹き出した。
漫画みたいだと思いつつも、慌てて鞄の中からハンカチを出してルルーシュに手渡す。
「大丈夫、ルルーシュ?」
けほけほとむせるルルーシュの背中をさすっていると、咲世子さんがナプキンを差し出してきたのでありがたく受け取った。
少しだけ濡れてしまったルルーシュのズボンを、染みにならないように丁寧に拭く。着替えを取りに行こうとした咲世子さんを手で制し、ルルーシュがようやく顔を上げた。
「ど、どういうことですか、咲世子さん!」
「どういうこと、とは?そのままの意味でございます。お二人は思いを通じ合わせたものだとばかり…私の勘違いでしたでしょうか?」
咲世子さんの言葉に、ルルーシュはぱくぱくと口を開閉させるだけだ。何とか言えと、ルルーシュに目で訴えられて僕は仕方なく咲世子さんを振り返った。
「えーと、どうして分かったんですか?」
「なっ……!!!?」
僕の言葉に、ルルーシュの顔がどんどん真っ赤になっていく。咲世子さんが小さく「あら」と呟くのが聞こえた。
「うん、でもルルーシュ、本当のことだし、バレちゃってるなら言って祝福してもらった方がお得だよ」
「そっ…!」
そういう問題じゃない、ってところかな。ルルーシュがこの状況に反応しきれていない、今がチャンス。つまるところ、僕は誰かにルルーシュとの事を言いたくて仕方ないんだ。
咲世子さんはにっこりと微笑んで、そうですね、と話し出した。
「確信を得たのはお二人がソファにお座りになったときでしょうか」
「座ったとき?」
ルルーシュも不思議に思ったのか、まだ少し目元を赤くしながら「何か特別なことをしたか?」と首を傾げる。
「いいえ、特別なことは何も。ただ、お二人が自然にそこへお座りになったので」
そう言われて、僕らは自分たちの座っているソファを見つめた。何の変哲もないただの2人用掛けソファ。
「…あ」
隣でルルーシュがまた顔を真っ赤にしながらバツの悪そうな顔で俯いた。
「え、なに、どういう意味?教えてルルーシュ」
さっぱり分からないと言うと、「断る!」と言ってキッチンへ行ってしまった。声の調子からして怒っているわけじゃないと判断して、僕は向かいで微笑んでいる咲世子さんに助けを求めた。
「簡単ですよ、スーさん。座席は、そのソファを含めて5つ。うち3つが一人掛け用です。以前こちらへいらっしゃったときは、ルルーシュ様はナナリー様のお隣に座られたのに、今日はスーさんの隣に腰を下ろされました」
「…あっ!」
言われて思い出した。
「そうだ、確かに…。うーん、でもそんなことで本当に?」
結果的には正解なわけだし、疑うわけじゃないけどと続けると、咲世子さんは悪戯が成功した子供みたいに楽しげに微笑んだ。
「分かるものです。それに、あんな風にお互いを優しく見つめていたら分からない方が野暮ですよ」
咲世子さんの声の後に、キッチンからガシャン!と大きな音が聞こえて思わず腰を浮かす。
「いっ、いいぞ、来なくていい、スザク!ヤカンが落ちただけだ!」
必死な様子でルルーシュの声が聞こえてきた。
「聞こえてたみたいですね」
苦笑しながら言うと、咲世子さんはますます楽しそうに表情を崩す。
「よかったですね、スーさん」
「はい、ありがとうございます!」
初めて二人の仲を祝われて、面映い気持ちになる。6年越しの初恋が叶ったのだから、喜びも倍だ。
二人してにこにこしていると、やっとペースを取り戻したらしいルルーシュが焼き菓子を持ってキッチンから出てきた。
「ところで、」
タイミングを見計らったわけではないだろうけど、また同じ調子で発された咲世子さんの声に、視界の向こうでルルーシュの肩が警戒に揺れる。まるで猫だ。
「ルルーシュ様とスーさんのお子様なら、きっと可愛らしくおなりでしょうね。最初は女の子が育児も楽といいますが、スーさんはどちらがいいですか?」
明日の天気は晴れだと思いますか、とでも言うように軽くぽん、と投げられた咲世子さんの言葉に、ルルーシュが綺麗につんのめる。
「わっ、だ、大丈夫!?ルルーシュ!」
慌てて駆け寄ると、ルルーシュは顔を赤くしたり青くしたりしながらがくりとうなだれていた。
「怪我はございませんか?」
空に浮いた焼き菓子を見事な反射神経で全部拾いきった咲世子さんが心配そうな顔で佇んでいる。
まったく悪意がないのがすごいな、と内心苦笑しながらルルーシュを抱き起こす。
「さっ、さ、咲世子さん…!」
何かを言いたいのに頭の回転が空回っているんだろう、ルルーシュがふるふると肩を震わせている。抱き起こした体勢のまま僕の腕を必死に掴んでいるのを見つけて幸せを感じながら、僕は思わず胸のなかの恋人を抱き締めた。
耳元で「ひゃわぁぁ!!」と可愛い悲鳴が上がる。盛大にだらしなく顔が緩んでいる自覚があった。
「子供は可愛いけど、僕はいいんです。初めて会ったときからルルーシュのことで精一杯なので」
君でいっぱいいっぱい
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