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現代パロ7 Author:澪
長く間が空いてしまって本当にごめんなさい;
ゆつきさん、原稿がんばって!><






 ただいまって言っておかえりって言われる。
 ただそれだけのことがどうしようもなく幸せで、突然与えられたそれは簡単にからっぽだったコップをあふれさせて、もう、それしか見えなくなってしまって。
 だから忘れていたんだ。優しくて幸せなものは、とても繊細なバランスの上に成り立っているものだって。




 
Le Petit Prince 7






 玄関を開けて、真っ暗な室内に落胆をおぼえたことにスザクは苦笑した。ルルーシュだっていつもいつも帰りを待っててくれるわけじゃない。当たり前のことなのに、今まで当たり前のようにずっとスザクを迎えてくれていたから、あまりにもそれが身に馴染んでしまって、忘れていた。真っ暗な部屋に帰ってくる、この心の重い感じを。
 パチリパチリと電気をひとつずつつけながらリビングに入って、机の上のメモを見つける。
 『今夜は遅くなるかも知れないから、夕飯は冷蔵庫のものを温めて、先に休んでてくれ』
 急いで書いたのだろうか、いつも端正に整っているルルーシュの文字が少しだけ慌てていた。
「どこ行ったんだろ……」
 ぽつりと独り言を漏らして、スザクはちょっとぼんやりとそのメモを見詰めた。
 最近のルルーシュは、なにかと裏でこそこそとしている気がする。部屋では夜遅くまで何かをしているようだけれど、声をかけると勉強だと言い張る。授業では器用に居眠りをしているし、サボることも多い。学内ですぐにどこかに消えてしまうルルーシュを見つけると、大抵電話で誰かと話しているがスザクを認識するとすぐに通話を終える。事務的な礼儀正しい声のときもあれば、苛立ちを抑えているような声のときもある。
 姿を隠したままで、通話を盗み聴きしてしまいたい衝動に駆られることもあるけれど、そこは最低限のプライドと礼儀を守っている。
 ルルーシュが自分から話してくれるのを待っている。
 けれど今日この不在。行き先も告げずに。
「絶対におかしい」
 すべてを包み隠さず話してほしいわけじゃない。話せないことも話したくないこともあるだろう。自分にだって、ルルーシュには聞かせたくないことが山ほどある。
 でも、じゃあ、なんだろうこの心の重苦しさは。
 スザクは少し右上がりのクセのある、ルルーシュの書き残しを撫でて溜息をついた。




 日付もすっかり変わってしまった夜半、玄関を開けてルルーシュはギクリと身を固くした。目の前にスザクが立っていた。
「おかえり、ルルーシュ。ほんとに遅かったね」
「……っ、た、ただいま……」
 反射でそう言ったはいいけれども、道を譲るでもないスザクにルルーシュは困惑する。スザクの声はひどく穏やかだったけれども、無表情だ。スザクのこんな貌は見たことがない。子どもの頃はころころとよく笑って怒っていたし、再会してからはふにゃふにゃとやたらと人当たりのいい笑顔を浮かべてばかりだったスザクが。
 無表情。
 その得体の知れない怖ろしさをひやりと感じつつもルルーシュが微笑むと、スザクの眉がぴくりと揺れた。
「先に寝てろって言ったのに。待ってたのか? 心配性だな」
 退く気配のないスザクの脇をすり抜けようとしたら、痛みを覚えるほどの強さで腕を掴まれてまたぎょっとする。
「香水のにおいがする。女性物だよね」
 ルルーシュは舌打ちしたくなるのを堪えて、ふうん、と小首を傾げた。
「女物だとわかるのか。随分と鼻が肥えているじゃないか」
「それにその格好。どこ行ってたの? お酒のにおいもするけど」
 綺麗に嫌味をかわしたスザクに、無視かとルルーシュが眉を顰めると腕に更に力がこもった。
「つ……っ、ただの食事会だ……! フレンチだったから、正装なんだよ。それより、離せ、痛い」
「ああ、ごめん。でも、誰との食事会か言ってくれるまで離さない」
「はあ?」
 ルルーシュはぽかんと口を開けてちょっとスザクを見詰めてしまった。
「答える必要性を認めない」
 ルルーシュが凛と静かにそう告げたことで、スザクの中でぱちりと何かがはまった。
 そうだ、これは、独占欲だ。
 とても、重くて、苦しい。
 腕を掴む力が緩んでしまって、機を得たりとするりとルルーシュは逃げていってしまう。それにスザクは胸が引き絞られるような焦燥感を覚えて、気がつけば背中からルルーシュを抱き締めていた。
「スザク!?」
 首筋に鼻をうずめて、甘い香りを吸い込む。こんなにおいなんて。
「ほんとは何処で誰と何をしてたの」
 胸の中に苦い自己嫌悪がじわじわとひろがっていくのを自覚しながら、それでも言わずにいられなかった。
「スザク……! どうしたんだ、この間からおかしいぞ。迷惑じゃないとは言ったが、俺にだってプライベートがある!」
 腕の中でもがくルルーシュをさらに強く抱き締める。
「君は僕に何も言ってくれない!」
「おまえは何も訊かなかっただろう!」
「今訊いてる!」
「何処で誰と何をしてたか!? アルバイトだ! 守秘義務があるからこれ以上は言えない。家を捨ててきたからには稼ぐ必要があるだろう! これで満足か!?」
「こんな香水のにおいをさせて、どんなアルバイト!? なにか危ないことしてない!?」
「危ないことってなんだ。俺はおまえと違ってとっかえひっかえ女を泣かせたり、そういう危ない橋は渡っていないが」
 叩きつけられた言葉に、拘束がゆるんだ。今度こそルルーシュはさっとスザクから距離を取って、高慢に眼を眇めて冷笑した。
「随分お盛んだったようだな。俺に遠慮しなくていいんだぞ? 好きに遊んで来ればいい」
「違う! 今は、」
 言葉はバタリとドアを閉める音に遮られた。閉ざされたルルーシュの部屋の前でスザクは立ち尽くす。知られてる。軽蔑された。確かにそんな時期もあったけれど、泣かせたりはしなかった。どんなに悔やんでも過去の自分は消せない。噂にどんな尾ひれがついているのか、考えたくもなかった。
 最低のこじれ方だ。もっと穏やかに問えば、ルルーシュももっと何かを話してくれたかもしれないのに。できなかった。ルルーシュのことになると、どうしてもうまくバランスがとれなくなってしまう。
 スザクはそっと、ルルーシュの部屋のドアに手を触れる。
「今は……」
 囁きは誰にも届かずに部屋に霧散する。

 好きなんだ。
 君だけが。
 こんなにも。




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