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澤村です!
星の王子様、第8話できましたっ!遅くなってすいません…。
私生活がすごいバタバタ…していました…(現在進行形)。はあはあ(息切れ)年どころか日を追うごとに遅筆に磨きがかかってくるミステリー。

5/31追記
書き上げたのに非公開にしっぱなしでした…。有言実行のつもりが有言不実行とは…すみません!!

本文は続きからどうぞ!






 スザクが掴んだ腕の赤みがなかなか引かない。
 スザクが顔を埋めた首筋の痺れが治まらない。
 あれは、誰だったんだろう。
 本当に俺の知る枢木スザクだったのだろうか。
 だってあまりにも。
 あいつ、らしくない。
 ベッドの上で自身の体を抱き締めながらそこまで考えて、ルルーシュは不意に顔を上げた。数分前に自分で閉めた部屋のドアを見つめる。
 らしくないなどと、どの口で言うんだ。
 俺にもスザクにもお互いが知らない6年間がある。
 執拗に問いかけてくる幼馴染みに、プライベートに踏み込むなと怒鳴ったのは誰だ。
「……俺だろう……」
 ぽつりと呟いて、ルルーシュは布団の中に潜り込んだ。




      Le Petit Prince 8




「…お兄さま、カップケーキでお家が埋まってしまいます」
 ナナリーの呆れ半分心配半分の声に、ルルーシュはやっと甘い匂いがキッチンに充満していることに気がついた。
 ルルーシュが無心になってかき混ぜていたボウルから顔を上げると、キッチンは言うに及ばず、カウンターの上やその向こうのテーブルの上まで所狭しとカップケーキが並べられている。背後のオーブンでは現在進行形で焼かれているものもあった。
「学校に持って行って、お友達にもお裾分けしちゃいましょうか」
 ナナリーが手前にあったカップケーキを手に取って明るく微笑む。
 カウンターの向こうのナナリーに苦笑して返しながら、ルルーシュは内心で重々しく溜息を吐き出していた。

 空が白み始める頃にスザクに気付かれないようこっそりと家を出たルルーシュは、駅前の24時間営業ファーストフード店に駆け込んだ。
 シュナイゼルと鉢合わせしないよう、兄が仕事に出かける時間まで暇を潰してナナリーを訪ねた。
 突然の訪問の挨拶もそこそこにキッチンに閉じこもったルルーシュをナナリーが見守ること数時間、すっかり太陽が真上に昇りきる頃にはカップケーキの山が築かれることになったのだが。
「袋が足りそうにありませんね。家にあった分は使い切ってしまいましたし、咲世子さんに買い足してきてもらいましょうか」
 ラッピング待ちのカップケーキがずらりと並んだテーブルを囲んで、ルルーシュとナナリーは配る用にとカップケーキを包んでいた。
 作業を始めて既に数十個と包んだはずだったが、未だに終わる気配はない。
「す、すまない…」
「いいんです。私、お兄さまのカップケーキ大好きですから。お兄さまの作られたものなら全部好きですけど」
 そう言って微笑むナナリーに、ルルーシュもようやく肩から力を抜いた。

 昨夜、布団に入って目を閉じたものの、うつらうつらと寝たり起きたりを繰り返したルルーシュは結局まともな睡眠をとれないまま朝を迎えた。
 幸か不幸か、今日は創立記念日で学校は休み。ルルーシュにもスザクにも特に予定らしい予定は入っておらず、このままいけば一日家に二人っきりになってしまうと思い至った瞬間、ルルーシュは財布と携帯電話を掴んで家を飛び出していた。
 家を出てファーストフード店で時間を潰している間に、なぜ俺がこんな逃げるような真似をしなくてはならないんだと思いもしたが、そのたびに昨夜見たスザクの顔がちらついて結局ルルーシュは家に戻らなかった。
 人伝で聞いた、本人に確認したわけでもない、しかも異性との交際関係というかなり踏み込んだプライベートな部分の話題を一方的にスザクにぶつけたことにも、ルルーシュは後ろめたさを感じていた。
 あまり触れられたくない部分を執拗にスザクに問い詰められたことへの焦りや反発めいた思いがあったにしろ、あの言葉は言ってはいけないものだったと思う。
 昔から自分とナナリーにだけはかなり甘い部分が目立つスザクだって、きっと腹を立てたに違いないと思えば、ますます帰れない。
 たまたま虫の居所が悪かっただけかもしれない。それどころか、純粋に自分のことを心配してくれただけかもしれない。考え出すと、扉を閉める前に見たスザクは、悲しそうな色を浮かべていたような気さえしてくる。
 どんな顔をして会えばいいんだ。ルルーシュは冷めてすっかり苦いだけとなったコーヒーを啜って顔をしかめた。
 ただ、散々迷った挙句に一言出かけて来るとだけスザクにメールを送り、携帯電話の電源を落として今に至る。

「お兄さま、紅茶をいれました。咲世子さんが買ってきてくれたんですが、すごく美味しいんですよ」
 家主であるシュナイゼルの趣味だろう、シンプルながら細部にまで細やかな装飾の入ったカップを手に取ると、薫り高い湯気が鼻腔をくすぐる。一口含んで、ルルーシュはほぅと息をついた。
「すごく美味しいよ。またいれるのが上手くなったな、ナナリー」
「ありがとうございます!ところで今日は一体どうなさったんですか、お兄さま?」
 にっこりと愛らしい微笑みで前振りも何もなく突然投げられた直球の質問に思わずむせる。ごほごほと咳き込むルルーシュにハンカチを手渡しながらも、ナナリーの微笑みは崩れない。
「だって、次にいらっしゃるときはスザクさんも連れてきてくださるっておっしゃったのに、今日はお兄さまだけ。シュナイゼルお兄さまが出かける時間を見計らっていらしたかと思えば、取り憑かれたように延々とカップケーキ作り…何もないなんて考える方が難しいです」
 ふわふわと砂糖菓子のように可愛らしい容姿とは裏腹に、年々内面が逞しくなってきている最愛の妹を見て、ルルーシュは机に突っ伏した。
「喧嘩でもなさったんですか?」
 そっと手を握られてルルーシュが顔を上げると、さっきまでの微笑みとは違う、優しさが滲むような甘やかな表情でナナリーが目を細めている。
「詳しくは聞きません。だけど、羨ましいと思います。何が原因か私は知りませんが、喧嘩ができるほど傍にいるってことなんですよね。あれだけ離れていて、声すら聞くことはできなかったのに、今は会おうと思えばすぐに会える距離にいるなんて。素敵なことだと思いませんか」
 ふふっとナナリーは微笑ってほんの少し首を傾げた。そしてそれ以上は何も言わず、紅茶のおかわりをいれてきますとキッチンに立つ。
「敵わないな…」
 ルルーシュは思わず苦笑をこぼした。
 ポケットから携帯電話を取り出し、意を決して電源を入れると、その途端ブルブルと震えて数通のメールを受信する。見れば全部スザクからのものでどれも数行と短く、ルルーシュの行き先を尋ねるものや昨夜の態度を詫びるものだった。
 【昨夜は本当にごめん。ちゃんと謝りたい。】
 その文面に、スザクの姿が重なる。
 昨夜のルルーシュを問い詰めた固い顔。
 おかえりという俺の言葉にただいまと笑う明るい顔。
 どちらもスザクだ。
 俺とナナリーが6年間会いたくてたまらなかった、体力馬鹿で、少し泣き虫で、変なところで勘がよくて、味覚が子供で、隠し事が上手くなくて、剣道が得意で、小動物が好きなくせにやたらと嫌われて、俺とナナリーを大切に思ってくれている、幼馴染みの枢木スザクだ。
 帰ろう。帰って昨夜途中で遮ってしまったスザクの言葉を聞こう。
 そして俺も悪かったと、ちゃんと謝るんだ。
 そうすればきっとすぐに仲直りできるだろう。またいつも通りの、こちらの力まで抜けそうな顔でめいっぱい笑ってくれ。
 ぱちんと携帯電話を閉じたところへナナリーが戻ってきた。
「次はぜひお二人でいらしてくださいね」
 どうぞと手渡されたカップケーキ入りの紙袋を受け取って、ルルーシュも頷く。
「ああ、約束だ。次は三人で一緒に出かけよう」
「ええ、楽しみにしています!」
 ナナリーの見送りに手を振って返しながら、ルルーシュの足取りはもう今朝のように重くはなかった。



   ***



「や……ってしまった………」
 がくっと膝から崩れ落ちると、スザクは携帯電話を握り締めて抱えてうずくまった。
 家の中にいることすらできなくて、昨夜ルルーシュが部屋に閉じこもった後、スザクはそっと家を出ていた。
 近所の公園で一晩頭を冷やして、街の店が開き始めた頃に戻った家にルルーシュの姿はなかった。ただでさえ落ち込んでいた気分が一気に地球の裏側まで落ちきったような脱力感に、僅かに感じていた空腹がきれいに霧散する。
 自室に置きっぱなしにしていた携帯電話のディスプレイにはただ簡潔に一文、【出かけて来る】とだけメールが表示されていた。
「これは…怒ってるなぁ…かなり……」
 試しにと電話もかけてみたが、案の定と言うべきかどうなのか、電源がOFFになっているというアナウンスが何回も流れるだけで一向に繋がる様子もない。
 少なくとも同居を解消されたわけではなさそうだ。最悪の状況だけは免れたらしいことにひとまずは安心してもいいのかなとスザクは溜息を吐いた。
 ちゃんと謝るのも言い訳をするのもメールで済ませてはいけないような気がして、スザクは打ったり消したりと散々悩んだ挙句、短いメールをいくつか送って携帯電話を閉じた。
 昨夜のルルーシュの言葉を思い出す。
 荒れていた時期のことをルルーシュの口から指摘されてまず感じたのは、激しい羞恥だった。過去の自分へのものか、その噂自体へのものか、自分でも後悔していることをルルーシュに知られたことへか、あるいは別のことへかは分からない。
 次いで焦燥、怒り、とりとめない色々な感情がぶわっと溢れ出て体が強張ったのを覚えている。腕の中からルルーシュが離れて、ほんの少しだけ遠くなった香水の香りに喉が詰まった。
 軽蔑されたという事実が身を裂くほどに痛い。別人になれるならなってしまいたい。だけど、過去は消せない。
 ゲンブの汚職事件で家の中も外も荒れに荒れ、心休まる場所など当時のスザクにはどこにもなかった。
 最初は、実家に辞職を報告しに来たゲンブの秘書に慰めてあげると手を伸ばされたのがきっかけだった。思い返せば何て浅はかだったのか。
 極論を言ってしまえば、相手は誰でもよかった。
 行為に没頭しているときだけは、汚職に手を染めた父親のことも、事が明るみに出た途端に父を擁護するどころか手の平を返して非難し始めた周囲の大人達のことも、根も葉もない噂を吹聴して首を突っ込みたがるクラスメイトのことも、煩わしいことは全部忘れられたのだ。
 スザクはルルーシュの部屋の扉に背中を預けたまま膝を抱えた。
 なぜそんなことをしたんだと声を荒げる自分に、父はスザクを振り返りすらせずにただ沈黙を貫いた。
 実の息子であるにもかかわらず、ゲンブからは何の釈明も説明もなかったことが寂しかったのかもしれない。
 自分がしたことではないのに、周囲から突然見放されたことが悲しかったのかもしれない。
 厳格でただの一度も笑顔など見たこともない父だったが、その背中はスザクにとって威風堂々とした立派なものだった。その父が汚職に手を染めた事実が悔しかったのかもしれないし、恥ずかしかったのかもしれない。
 そのことを考え出すと、スザクは数年経った今でもうまく説明ができない、複雑な気持ちになる。
 でもそれはただの言い訳だ。責任の擦りつけだ。それと自分の過去とは違う問題だと分かっていた。
 自分の弱さがあの過去を生んで、自分が逃げたしっぺ返しが今まさにきている。
「……嫌われただろうな。ルルーシュは…特に潔癖っぽいところがあるし…」
 のろのろと顔を上げて、室内を見渡す。ちょっと前まで自分一人で使っていた部屋。ルルーシュと一緒に過ごしたのは、一人暮らしをしていた期間に比べればほんの僅かな時間だけだ。それなのに、この広い部屋で一人どうやって過ごしていたのか、もう上手く思い出せない。
 ルルーシュはここを出ていくだろうか。
 けれど、もし一度でもチャンスがあるなら。
 突然スザクの握っていた携帯電話が震えた。メール受信の文字に、恐る恐る携帯電話を開く。知らない間にじんわりと手の平に汗をかいていた。
 【これから帰る。夕飯はデミグラスソースのハンバーグだ。】
 ディスプレイに並んだ文字を何度も読み返した。
 帰るという言葉に胸がいっぱいになる。スザクは滲む涙を懸命に堪えた。
 もしかしたら君はもう過ぎた事はいいと言うかもしれない。だけど、昨日のことを謝らせてほしい。そしていっぱい話をしよう。
 僕のことを話すよ。そしてよければ君の話も聞かせてほしい。
 結局我慢しきれずにこぼれた涙を拭って、スザクは返信ボタンを押した。

 【待ってる。気をつけて、帰ってきてね】



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